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「末吉暁子のがんこちゃん」

2013年2月24日
読売新聞日曜版

「末吉暁子のがんこちゃん」

鳥居晴美


学校でうんちができない子どもは少なくないらしい。

児童文学作家として長年、脚本を手がける小学1、2年生向け道徳番組の人形劇「ざわざわ森のがんこちゃん」(NHKEテレ、金曜午前9時)に、「うんちしたの、だーれ?」というお話がある。

「がんこちゃん」は、明るく元気な恐竜の女の子。

カタツムリの友だちツムちゃんはある日、恥ずかしくてトイレに行けず、こっそり草むらで用を足す。

ところが、ボール遊びをしている仲間にうんちが見つかり、泣いてしまう。

先生は「ちっとも恥ずかしいことじゃない。ちゃんとトイレでしましょうね」と話す。

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(藤原健撮影)

「小学一年の時、クラスで椅子の下にうんちをした男の子がいました。

『健康や安全に気を付ける』というテーマの時、子どもの頃の体験を基に書いたら、番組を見た先生方から『子どもたちが安心してトイレに行けるようになった』『行った子を冷やかさなくなった』と反響が大きかったですね」


青山学院女子短大を卒業後、講談社に入社。

長女を出産し、「編集の仕事と子育ての両立は無理かも」と悩んでいた時、担当していた佐藤さとるさんに「書いてみたら」と勧められる。

アドバイスをもらいながら創作の世界に入り、退社後の1975年にデビュー。

女の子が少女時代の母と交流するファンタジー作品『星に帰った少女』は、日本児童文芸家協会と日本児童文学者協会の新人賞を受賞した。


生きる楽しさに面白み


個性豊かなお化けが登場する「ぞくぞく村のおばけ」シリーズを執筆中の頃、「番組を見た子どもたちが元気に学校へ行けるように、子どもの立場で書いていただける方」(初代ディレクターの梶原祐理子さん)と、声がかかった。

「大人が子どもにやってほしくないことばかり書いている」とためらうが、「道徳教育の狙いと、『生きることは楽しい』と子どもたちに伝えたくて書いている私の立場は矛盾するものではない」と気づき、仕事を引き受けた。


「友達と仲よくし、助け合う」「約束やきまりを守る」など、学習指導要領の内容を踏まえながら書く物語は伸びやかでお説教臭さはない

「優等生ではなく、泣いたり怒ったり、わがままも言ったりする」主人公も人気で、番組は96年4月の放送開始から今春で丸17年を迎える。

160本を超える脚本の一部は、番組のキャラクターデザインを担当する絵本作家・武田美穂さんとのコンビで、本にもなった。

「番組を見たら、本も読んでほしい。子どもたちが『読書も面白い』と気づいて、ほかの作品も手にとってくれたらうれしいですね」


~~~~~~

好評だった番組を本にした「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ(講談社)は全8巻。

年齢層を下げて小学一年を主な対象とした「新・ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ(同)にも着手し、昨年11月に1巻目『がんこちゃんはアイドル』が出版された。

佐藤さとるさんらと1983年に創刊した児童文学雑誌「鬼が島通信」が、創刊30周年の節目を迎えた。

「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ 末吉暁子さん 

親子の読書 おはなしめぐり
「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ 末吉暁子さん 

2011年3月23日 毎日新聞朝刊


恐竜の女の子を主人公にした人形劇「ざわざわ森のがんこちゃん」は、96年からNHK教育テレビで放送が始まった。

脚本を担当する末吉暁子さん(68)が書いたシリーズ本8冊は、講談社から出版されている。

末吉さんは子どもたちに「がんこちゃんのように、もっと自由に感情を出してもいい」と伝えたいという。

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脚本の依頼があり、小学一年生の道徳番組と知った時は断ろうと思いました。

私の書く幼年童話は、はちゃめちゃでアンチ道徳的。

子どもの心をのびのび羽ばたかせるようなものばかりでしたから、無理じゃないかと。

でも、道徳の本質はコミュニケーションで、子どもがほっとしたり笑えたりするものでいいんだと気づきました。

思いっきり面白くて子どもたちが夢中になれるものを作ろうと、元気な恐竜の女の子と家族、友だちの物語を書きました。


がんこちゃんは大きくて力持ち。

不器用ですが、素直で明るい子です。

泣いたり笑ったり、感情をストレートに表現しますが、やさしいところもあります。

力持ちのお母さんと家事が得意なお父さんなど、意識的に男女の役割を逆転させました

子どもたちは喜んで見てくれますが、やはりテレビは消えてしまう。

いつでも手元に置いて、がんこちゃんを楽しめるように、本にすることになりました。


テレビは動きがあるし、音楽や効果音もあるので退屈しません。

文章は物語の魅力で引っ張っていかなければならないので、よりハラハラどきどきさせたり、意外性を持たせたりします。

なくなった首を見つけた骸骨が旅立つシーンなども、本では描いています。


集中して物語を追ったり想像したりすることは、本でないとできません。

本のがんこちゃんも楽しんでもらえたらうれしいです。

脚本は150作以上あり、トイレの話や環境問題など、本にして読んでもらいたいテーマがたくさんあります。


もっと感情を出していいよ


がんこちゃんは寝坊して遅刻したり、怒って大声で泣いたりします。

うちの娘もそのまま同じ事をしていました。

天真らんまんな姿が、子どもたちの共感を呼んでいるのでしょう。


今の子どもたちは早く大人にさせられているような気がします。

周囲に気遣いをして、感情を自由に出せていないように思えるのです。

子どもは、もっと泣いたり笑ったり、怒ったりしていいんです。

大人は、そんな子どもたちを愛情を持って見つめてほしい。

子どもは、自分が十分愛されていると実感することで、他の人への思いやりの気持ちを育てていくのだと思います。

『ざわざわ森のがんこちゃん』 世界をかける!

『ざわざわ森のがんこちゃん』 世界をかける!

2000年8月28日 毎日小学生新聞 

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『ざわざわ森のがんこちゃん』の作者、末吉暁子さんが、日本ペルー親善協会の人たちとペルーを訪れ、ペルーの子どもたちに「がんこちゃん」の本な どをプレゼントしました。


「がんこちゃん」は、今年の4月から衛星放送を通じて世界中で放送されて います。

NHKの衛星放送のチャンネルは海外では1つしかないので放映す る番組も限られています。

教育テレビの番組が入るのはとてもめずらし い、といいます。

もちろん、ペルーでも「がんこちゃん」は子どもたちに大人気。

末吉さんがおとずれた日系人の子どもの多い小学校でも、大勢が「がんこちゃん」のことを 知っていました。


また、NHKが特別につくったスペイン語版の「がんこちゃん」のビデオも持っていき、現地のラ・ウニイヨン小学校でビデオ上映会をしました。


日本語の「がんこちゃん」は英語やスペインごでは、「ロッキー」。

上映会 後、日本語版の本をプレゼントされたみんなは絵を見て、「ロッキー!」とさけんでいました。


現地の新聞「ペルー新報」は末吉さんが子どもたちと絵本を見ている写真を一面に大きく掲載しました。


末吉さんは、「海外の子たちも『がんこちゃん』を見てくれていると知って 、うれしさいっぱいです。『がんこちゃん』が元気いっぱいに世界中をかけまわっているようで、とってもはげみになりました。」と話していました。

「ジャカルタの『子どもの本祭り』」

ジャカルタの「子どもの本祭り」

大法輪 2005年9月号

末吉暁子


この七月にインドネシアのジャカルタで開かれる「国際子どもの本祭り」に参加することになった。

自分の童話作品を、ペープサートという紙人形劇にして上演する予定だ。


最近、国内でもときどき上演したことはあるが、子供達は、本でおなじみのキャラクターの紙人形が動くさまを、目を輝かせて見てくれる。

それがうれしくて、こちらもついついしゃしゃり出て行く気分になるのである。


日本で上演するときは、かかわりのある周囲の人たちを巻き込んでお手伝いしてもらうので、何とかうまく行っていた。

しかし、今度はインドネシアである。

そうそうボランティアが同行してくれるはずもない。たまたま同行することになった夫をかり出すほかはない。

さらなる問題は、インドネシア語の通訳を介さなくてはならないことだ。

幸い、これは、現地にいる日本人ボランティアが買って出てくれた。

しかし、現地に行ってリハーサルをして見るまでは、どんなことになるのか、見当もつかない。


もともとこのイベント、スマトラ沖の地震で大きな被害をこうむったアチェ州で行う予定だったらしい。

だが、現地の復興は思わしくなく、開催のめどが立たなくなっていた。


そこへ世界中から援助の手が差し伸べられ、場所を変えてジャカルタで行うことになったのだそうだ。

日本からもいくばくかの寄付金が届けられたと聞くし、日本だけでなくアメリカやシンガポールなどの近隣諸国からも、さまざまな形で公演への参加があるという。

私も、主催者が知り合いのインドネシアの女性だったので、何か応援できることはないだろうかと申し出たのが発端だったのだが、いざ日程が近づいてみると、いろいろ準備も大変だ。

事実、こんなことをしていないで、机に向かっていればいいのに・・と、しらけた目で見ているもう一人の自分がいるのにも気づいている。

目を輝かせて見入ってくれた日本の子供達と同じように、インドネシアの子供達が喜んでくれれば、そんな危惧も吹っ飛んでしまうのだが……。      

「ぶっとんだものをつくりたい」

次世代に語り継ぎたい傑作がある

児童文学を育んだ女性作家たち 
Series 5 末吉暁子 より抜粋

MOE 2007年7月号
取材・文/南谷佳世 撮影/木野聖二


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『ざわざわ森のがんこちゃん あたらしいおともだち』(講談社)より。武田美穂絵。

テレビのキャラクターも武田さんがデザインしているので、イメージぴったりの挿絵。



・ぶっとんだものをつくりたい


じっくりつくりあげる本とは対極にある、テレビの世界でも末吉さんの物語は大ヒット。

脚本を手がける『ざわざわ森のがんこちゃん』は、NHK教育テレビで10年を超える長寿番組であり、小学校の道徳教材としても使われています。



末吉「私は逆にアンチ道徳的なことばかり書いてきたでしょ(笑)。

幼年童話は、子どもをのびのびと解き放してあげるようなものでないと面白くないから。

だから文部科学省の徳目に合ったお話なんて、私の仕事ではないですって最初はお断りしたんです」。


MOEの取材のために注文してくださった、東京・大田区の洋菓子店(木いちご)特製がんこちゃんケーキ。かわいさもおいしさも抜群。
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けれども、熱心に説明されるうちに、次第に心が動きました。


末吉「よくよく考えると、道徳ってコミュニケーションだな、と思って。

自分をだいじにする、安全に気をつけるとか、いのちの問題にもかかわる、根本的なことなんですよね」。


『ざわざわ森のがんこちゃん』の脚本(左・中)と学校での指導の手引き(『学校放送』)。
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それまでの番組とはまったくちがう、「ぶっとんだ」ものをつくりたい――そんな思いから誕生したのが、恐竜のがんこちゃん


末吉「ほとんどうちの娘のちっちゃい時がモデルです。ねぼうはするし、なまけるし(笑)。

あんまりいい子ちゃんにしたらつまんないから。子どもの願望そのままの、素直な主人公にしたかったんですよね。

女の子だからって、性格を限定したくなくて。

それで家事の得意なお父さんと力持ちのお母さんというふうに、役割を逆にしてるんです」。


仕事部屋の本棚は著作や資料などでぎっしり。写真下方の棚に並ぶのは『ざわざわ森のがんこちゃん』の脚本。
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がんこちゃんと仲間たちは、今や日本中の人気者。


末吉「10年も続くと、どんな田舎へ行っても子どもは知ってるんですよね。そこが本とまったくちがう。

でも、テレビは1回放送したら消えちゃうけど、本はずっと残るし、いつでも手に取ることができるから

本にしたいって最初に言ってくださったのは、NHKのディレクターの方だったんです」。


そういうわけで「がんこちゃん」は、幼年童話と「テレビ版」の2種類の本でも楽しめます。


がんこちゃんと仲間たちのぬいぐるみがずらり。
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末吉「テレビは、私の脚本がもとではあるけど、短期間に百人近いスタッフがかかわってつくる協同作業なんですよね。

本は編集者と絵描きさんと作家で、じっくりつくっていくもので。

でも、私にとっては面白いストーリーをつくるという、意味では同じなんですよ。

本はテレビみたいに瞬時に反響が返ることはないけど、やっぱりこれからも、書いていきたいですね。自分なりの素材を見つけて、ファンタジーを」。

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プロフィール

catonbooks

Author:catonbooks
児童文学作家 末吉暁子の世界へようこそ!
公式HP「末吉暁子童話マップ」(01~16年)を元に、ちょびっとずつ公開。暁子さんの日記などは大体そのまま掲載しております。
猫とファンタジーを愛した作家の部屋へ、どうぞお立ち寄りくださいね~☆byりさ

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