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作家の横顔  末吉暁子さん

作家の横顔 
末吉暁子さん
 
                      
Ya!! (宅配書店 SANTA POST機関紙)
2002年1月1日新春特別号

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ちっちゃな子だったら『ざわざわ森のがんこちゃん』、小学生だったら『ぞくぞく村のおばけ』シリーズでおなじみの児童文学作家・末吉暁子さん。

同人誌『鬼ヶ島通信』については昨年の「YA!!」9月号でもご紹介しましたが、この同人誌には、「ももたろうコーナー」という新人児童文学作家の登竜門となっているコーナーがあり、そこに入選された方たちで作った『ももたろう』という同人誌は、印刷等をサンタポストがお手伝いしています。

その『ももたろう』同人のおひとりで、『おとなりは魔女』などの作品を書いている赤羽じゅんこさんと一緒に世田谷にある末吉さんのご自宅へ取材に伺いました。

11月の暖かい午後、高いマンションなどがなく空がきれいにみえる閑静な住宅街の一角でお庭につくったテラスでお茶を飲みながらのひととき。きれいなアカトラ3代目の猫君と一緒に楽しい時間を過ごしました。


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サンタ:先生はずっとこちらにお住まいなのですか?

末吉:夫はここで生まれて育ったのですが、私の実家は沼津で、5人姉弟のまんなかなの。

赤羽:姉弟のまんなかというと、結構放っておかれませんか?

末吉:そうそう。だから子供の頃は本ばかり読んでいましたね。アンデルセンの童話や海外の名作全集などはずいぶん読みましたね。でも、本格的に日本の創作童話に出会ったのは、講談社へ就職してからです。

サンタ:最近、先生の訳で「アンデルセン童話」が偕成社から出ましたよね。

末吉:あれは偕成社のロングセラーですが、今回、新しく選び直して書き直したものです。1年生向け、2年生向け…、というように年齢ごとに選んで読みやすい本になっています。

サンタ:次女が今小学校4年生で、学校の図書室からよく先生の『ぞくぞく村のおばけ』シリーズを借りてきますが、あのシリーズは楽しいですよね。

末吉:垂石さんの絵がまたいいでしょう。ただ上手いだけじゃなくて、アイデアがおもしろくてお話をふくらませてくれるの。描かれた絵をみて、またそこからアイデアが浮かんできたりします。画家の方とは、こちらのイメージを伝えながらやりとりして作品をつくりますが、いい関係で仕事ができているシリーズです。

赤羽:最初からシリーズのつもりで書かれたのですか?

末吉:ちがうの。最初は、14年位前に雑誌に書いたものなのよ。坂田靖子さんの漫画にミイラが出てくるのがあるんだけれど、それがおもしろくて、私もミイラを主人公にして書いてみたの。編集者から「絵描きさん誰にしましょう?」といわれて、「実は私、坂田靖子さんの漫画からヒントをもらったの」といったら、本当に坂田さんに頼んでくれたの。

その話が子どもたちに好評で、あかね書房で単行本にしようということになり、単行本では挿し絵を垂石さんにお願いすることになったの。1作目は表紙があざやかなブルーのバックで、とてもきれいな本ができました。 

当時、あかね書房の会長(初代の社長)さんが「これは売れるよ!」とおっしゃって下さり、売れゆきもよかったのでシリーズ化が決まりました。

サンタ:児童文学作家になられる前は、講談社でお仕事をされていたのですよね。そのきっかけは?

末吉:私は青山の短大で英文科だったのですが、当時は結構出版社からも求人があったのです。

『ヤングレディ』や『女性セブン』など、ちょうど女性週刊誌がたくさん発刊された時期でした。ですから、最初は子どもの本ということでなく、『若い女性』という月刊のファッション誌に配属され、1年間ファッションの雑誌に関わりました。デザイナーから洋服を借りて、モデルに着付けて撮影するというような仕事で、自分にはいちばん向いていないということが、あとでわかったのですが、突然『ディズニーランド』という雑誌に配置転換になりました。
 
当時は今ほどディズニー関係も流行ってはいなくて、どちらかというと総合誌的な子ども雑誌でした。見開きの頁を自分の好きな詩や絵の作家さんに頼んだりすることができて、とても楽しかった。
 
3年目にまた転属で、今度は児童図書の担当になりました。そこで子どもの本というものに本格的に出会ったわけです。何の予備知識もない私に、若い男性の編集者が「これ、おもしろいよ」と教えてくれたのが、佐藤さとるさんの『だれも知らない小さな国』だったのです。それが初めて読んだ創作童話でした。こんなおもしろい世界があったんだ! と思って、それから次々と夢中になって読みました。
 
当時、その部署では、世界の名作絵本というのをシリーズでつくっていました。山田三郎さんの挿し絵も魅力的で、お母さんがたには人気がありました。そのうち講談社でも創作をやりましょうということになって、佐藤さとるさんの『わんぱく天国』、松谷みよ子さんの『ふたりのイーダ』といった創作シリーズを出版するようになり、私も佐藤さんの担当になりました。松谷さんが『ちいさいモモちゃん』や『龍の子太郎』を出したり、中川李枝子さんの『いやいやえん』も出た時期でしょう。ちょうど日本の創作童話のおもしろいものが出始めたころだったんです。

サンタ:外国の児童文学は学研から出てましたよね。『ちいさなスプーンおばさん』や『火のくつと風のサンダル』なんてなつかしいなぁ…。

赤羽:プロイスラーの『小さな魔女』とかね。よく読んだ!

末吉:あれは、いいシリーズでしたよね。岩波書店だとピッピのシリーズとかね。その当時、宇野和子さんという方の応募原稿で、講談社の新人賞をお取りになった『ポケットのなかの赤ちゃん』という作品を私が編集しましたが、それが最近また復刊されたんですよ。うちの子どももあれは好きだったと言ってましたね。

赤羽:え? 私これ、昔読んだ覚えがある!

末吉:応募原稿のあいだに著者の鉛筆がきの挿し絵がついていて、それがとてもあたたかみのあるいい絵だったので、絵も著者にお願いしたのです。

サンタ:その後、先生は児童文学作家になられたのですよね?

末吉:その頃子どもが産まれて、仕事と家庭の両立がだんだんむずかしくなってきました。突然夕方5時から会議だといわれたりすると、もう、お手上げです。

そんなときに佐藤さとる先生が、「末吉さんも書いてみたらどうですか? ぼくでよかったら読んであげますよ」とおっしゃって下さったのです。でも、そういうお話って社交辞令も半分入っているでしょう。そう思っていたら佐藤先生の作品の絵を描いている村上勉さんが「末吉さん、佐藤さんがあんなことを言うなんてめったにないことだから、書いてごらんよ。いいじゃない、失敗したって…」と熱心に勧めてくれたのです。それまでは本気で書こうなんて思っていなかったのですが、そのときにふっと書いてみようかという気持ちになったのね。
 
でも、子どもがまだ赤ちゃんだった頃で、夜中におっぱいを3回くらいあげるような時期だったでしょう。今思うとどうやって書いたのか不思議なのですが、編集の仕事を続けるのも無理そうだし、かといって仕事を全部やめたくはないし、どうしようかと将来の展望がなく悩んでいたときでしたから、必死にやってみたのではないかと思うのです。
 
短編を2作品書いて、佐藤先生に読んでいただいたら、そのうちのひとつがおもしろかったというお手紙を下さったのです。でも、そのままじゃ短いから、それをふくらませてみたらどうですか? といわれて書いたものが『星に帰った少女』です。お母さんのお古のコートを着て、バスに乗って過去へ行き、お母さんの少女時代に出会うというような話だったのですが、その後2年くらいかかって長編に作りあげました。あの本は、両親が離婚するという深刻な現実も書かれているでしょう。ちょっとしんどくなって、途中で中断もしながら細々と書いていました。
 
そのうちに子どももだんだんと大きくなってきて、遊んでいるところなどを見ていると、とてもおもしろいんですよ。その遊びを見ながらスルスルっと書けたお話(『かいじゅうになった女の子』)があって、それも佐藤先生に読んで頂いたら「ふうん、末吉さんがこんなユーモラスなお話を書くと思わなかった。おもしろいよ」と、おっしゃって偕成社を紹介して下さり、そちらのほうが先に本になってしまいました。その1年後、やっと書けた『星に帰った少女』が運良く児童文学者協会と児童文芸家協会の新人賞をダブルで受賞することができました。

サンタ:編集者と作家のお仕事って全然ちがうもののように思えるのですが…。

末吉:私は編集者としてはあまり優秀ではなかったのではないかしら…。
 
今回の『鬼ヶ島通信』は、編集者特集をしたのですが、編集者というのはいかにうまく作家から作品を引き出そうかということを考えて、相手のペースにあわせてやらなくてはいけないし、まめに動ける人でないとつとまらないと思います。私は不精な性格だし、作家の方をいい気分にさせるようなことも言えないし…、小さな子どももいましたから時間的にも制約がありましたし。
 
ゼロからつくる作家と、その作品をいいものにしていく編集者とは全然ちがうタイプの仕事で、2つの仕事が合体していいものができればすばらしいと思うのですけれど…。

サンタ:長編の日本のファンタジー『地と潮の王』は、よかったです。あれは15年かかってできあがったということですが…。

末吉:同人誌『鬼ヶ島通信』がはじまるときに『ママの黄色い子象』という作品を連載しました。それまではほとんどファンタジーしか書いたことがなかったのですが、あれは友人の家庭に起きたことをもとにして書いたリアリズム作品だったのです。
 
それが終わって、さて何を書こうかと思ったとき、どうせなら今までまったく書いたことのない作品をやろうと思ったのです。それまでも古事記や日本書記など古代史が好きで、講座などにも通っていたのですが、勉強していくとファンタジーの素材がゴロゴロところがっているのです。
 
こういうのもいいなぁと思いましたが、本格的に歴史を勉強をしたわけではないから不安な面もありました。でも、鬼ヶ島は同人誌だから自分の気が済むまで好きなように書けるかなと思って書き始めたのです。
 
途中まではストーリーがどう展開するかもわからなかったのですが、4回目あたりからはやっと方向が見えてきました。連載が終わると講談社で本になることが決まり、その後の書き直しにも3,4年かかりました。

サンタ:その後、ざしき童子のお話を書かれたのですね。

末吉:ふつう「ファンタジー」というと、だいたい西洋のイメージがつよいでしょう。でも、日本の神話や伝説にもいろいろその要素があって、地方などに行くとその土地にまつわるおもしろい話がたくさんあるのです。

 「今でもざしき童子が出る」という旅館に行ったり、地元にしかない資料などを読んだりして、だんだんと内容もふくらみ、ジグソーパズルをはめるようにして『雨ふり花さいた』ができたのです。
 
今は、『鬼ヶ島通信』に『水のしろたえ』を連載していますが、これは羽衣伝説を題材にしたものです。

サンタ:なぜ同人誌『鬼ヶ島通信』を出すことになったのですか?

末吉:20年くらい前に、編集者で評論家の野上暁さんと画家の村上勉さんと3人で飲んでいるときに「何かおもしろいことをやりたいね」ということから始まって、佐藤さとる先生や、気の合う編集者などにも入っていただき、7人くらいではじめたのです。いろんな人が出入りしました。
 
画家の伊勢英子さんにも書いていただいたりした時期もありました。その後、ご一緒に赤ちゃん向けの絵本をつくったりもしました。
 
今は、楽しく、やれる人だけでやりましょうという感じで続けています。はじめてからそろそろ20年になりますね。

サンタ:今、先生の作品はパソコンをつかって書かれているのですか?

末吉:今はそうです。その前はワープロでしたが、手書きからワープロに移行するときは、自分の文章じゃないような気がしましたね。
 
赤羽さんは?

赤羽:私はワープロをつかっています。高学年向きはいいのですが、小さな子ども向けに書くときに、子どものリズムというのかな、手で書いたほうが味わいがあるものができるのかなと思っています。編集の人からも「一回、手書きでかかないと、文章は良くならないよ」と言われたことがありますが…。

末吉:佐藤先生も「文章は手が書く」とおっしゃったことがありますね。手で書いていると、書きながら文章がもっとよくなったりすると聞きます。何かわからないけれど手で書く良さというのがあるのでしょうね。
 
最初にワープロで書いたときには、なんか文章がツルッと滑っていってしまうような感覚がありました。慣れていなくて焦ってしまったのかしら…。でも、慣れというのは恐ろしいもので、パソコンに慣れてしまうとだんだん不精になってきて、手書きの手紙を書くのも億劫になってしまうのよね。

サンタ:末吉先生のお薦めの本は何かありますか?

末吉:たくさんあるなぁ。さっきも言った『だれもしらない小さな国』。定番ファンタジーだったら、ちょっと昔の本ですが、トールキンの『ホビットの冒険』やバーバラ・スレーの『黒猫の王子カーボネル』がおもしろいですよ。最近のものだったら『さよなら、「いい子」の魔法』(ゲイル・カ-ソン・レヴィン作)や『月の石』(トールモウ・ハーゲン)。夢中で読みました。
 
日本のものでは、岡田淳さんの学校もののファンタジーとか、富安さんのムジナ探偵局のお話なんかおもしろいですよ。最近3巻目の『闇に消えた男』が出ましたね。ご本人もとてもおもしろい方。たかどのほうこさんの作品もいいですよね。やっぱり、ファンタジーが好きですね。

サンタ:小さい頃だと、そういうファンタジーの物語にスッと入れるのですよね。大人になるとなんだかそういうものを読むのも面倒になってしまうのですが…。

末吉:大人になると理屈が先に立ってしまって、いきなり異世界に入ることがなかなかできないですよね。だからファンタジーにはついていけないという人がいるんだと思いますが、子どもの頃はスッと入れるから…。

サンタ:やわらかい頭のうちにたくさんのファンタジーを読むと世界も広がるかもしれません。
 
末吉さん、赤羽さん、どうぞこれからもいい作品をつくってください。

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Author:catonbooks
児童文学作家 末吉暁子の世界へようこそ!
公式HP「末吉暁子童話マップ」(01~16年)を元に、ちょびっとずつ公開。暁子さんの日記などは大体そのまま掲載しております。
猫とファンタジーを愛した作家の部屋へ、どうぞお立ち寄りくださいね~☆byりさ

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