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「読者との距離 」

「読者との距離 」

平成16年6月5日 
静岡新聞夕刊コラム「窓辺」第11回

末吉暁子 
 

人前で話すのは、大の苦手だった。

二時間の講演予定なのに45分で頭の中が真っ白になって、立ち往生した事もある。作家は書いてさえいればいいという思いもあったのだが、今は、各地の読者との触れ合いは楽しみになりつつある。

そんな風に変わったのは、オランダの童話作家R・クロムハウトさん(以下Rさんと略す)の影響もあるかもしれない。

Rさんとは、東京で開かれた「子供の本の世界大会」で知り合った。今でこそ、彼はオランダの子供達に大人気の作家だが、当時はまだ児童書を数冊出したばかりの新人だった。とはいえ、日本滞在中も目を見張る行動力で、さまざまな日本人と交流していた。本国でもさまざまなイベントを精力的にこなしている様子だ。

その後、Rさんは、オランダ翻訳基金などの招きで2度ほど来日し、日本の各地で講演をしている。私も何回かお供する機会があったのだが、Rさんの話しぶりは実におみごと。高い演壇から、さっと飛び下りて観客と同じフロアに立ち、一人一人に語りかけるように進めていく。同じ絵本でも、Rさんの話を聞くことで、どれほどおもしろくなったことか。

実人生では私の方がはるかに年長だったが、師匠のかばん持ちであちこち歩くうちにノウハウを教わったというところだろうか。

近頃はまた、インターネットの普及で読者との距離はぐっと近くなった。

HPの書き込みに返事を書くのは、手紙を書くより格段にらくだし、即座に反響も帰ってくる。匿名で書き込みがあっても、会ったときに名乗ってくれれば旧知の間柄となる。もちろん、いい事ばかりとは限らないが、読者なくしては作家の仕事が成り立たないのは事実だ。
 

~~あとがき~~


R・クロムハウトさんの本を、私は2冊翻訳しています。もちろん英語版から訳したものですが…。

『真夜中の動物たち』(岩崎書店)と

『やい、手をあげろ!』(あかね書房)です。

どちらもウイットとユーモアに満ちたたのしい作品でしたが、残念ながら現在は2冊とも絶版になっています。

当時は、オランダ語のできる翻訳家もあまりいなかったのですが、今は野坂悦子さんという心強い翻訳者がいますから、クロムハウトさんの本も次々、日本に紹介されるようになって、うれしい限りです。

私の本もクロムハウトさんの紹介で、オランダ語版になりました。

『ママの黄色い子象』がそれです。

そして、もうすぐ、『雨ふり花さいた』もオランダで出版されます。

座敷わらしを巡るファンタジーを、オランダの読者がどんな風に読んでくれるのか、楽しみです。

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Author:catonbooks
児童文学作家 末吉暁子の世界へようこそ!
公式HP「末吉暁子童話マップ」(01~16年)を元に、ちょびっとずつ公開。暁子さんの日記などは大体そのまま掲載しております。
猫とファンタジーを愛した作家の部屋へ、どうぞお立ち寄りくださいね~☆byりさ

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