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「散歩あれこれ」

「散歩あれこれ」
平成16年5月15日 
静岡新聞夕刊コラム「窓辺」第8回

末吉暁子 
 

たまに、高齢の義母を車椅子に乗せて近所を散歩する。

お年寄りと一緒にゆっくりゆっくり路地裏を歩いていくと、季節ごとに花の移り変わりも眺められて心がなごむ。今は色とりどりのばらが美しい。ジャスミンも、垣根からこぼれ落ちそうに咲き誇っている。

娘が赤ちゃんだった頃には、乳母車に乗せて、しょっちゅう買い物に行ったりした道だ。

でも、ずっと仕事を持っていて自分自身にゆとりがなかったせいか、季節の移り変わりなどには目が行かなかった。

唯一覚えているのは、急に雨にふられて乳母車ともども商店の軒下で雨宿りしていたら、なじみ客でもないのに店のおばさんが古い傘を貸してくれたことだ。返さなくてもいいからと言ってくれたのが、ありがたく胸に染み入っている。

最近は、同じように車椅子に乗ったお年寄りにはときおり出会う。でも、赤ちゃん連れにはまず出会わない。そのものズバリ、高齢化と少子化現象だ。

そのかわり、犬の散歩にはよく出会う。

たいがいの犬は、飼い主を引きずるように元気に歩いて行くのだが、中に一匹、大きな座布団を敷いた台車の上で腹ばいになったまま、飼い主に押してもらっている老犬を見かけた。大型のチャウチャウ犬だ。もう歩く事はおろか、目も見えず耳も聞こえないのだそうだ。

でも、嗅覚だけは立派に働いていて、以前、散歩した道のりを懐かしんで喜んでいるという。老犬の感じている事が飼い主にわかるのは、まさに長い年月を親密に暮らしてきたからだろう。

その犬の散歩姿も、最近見かけなくなってしまった。 年老いて弱っても、飼い主に変わらぬ愛情を注いでもらって長寿を全うするなんて、犬ながら、幸せな老後だと、つくづく思った。


~~あとがき~~


子供の乳母車より、老人の車椅子のほうをよく見かけると書いたら、そうとも限らないと家人に反論されました。

どうやら、私自身が、赤ちゃん連れのお母さんたちの出没する場所や時間帯に、用がなくなったせいらしいです。

車椅子のお仲間入りする日も、そう遠くない気がしてきました。

それより、例のチャウチャウ犬をしばらく見かけなかったので、どうしたのだろうかと心配していたところ、久しぶりに散歩(?)姿を見かけました。

こちらは車だったので、話しかけることも出来なかったのですが、なぜかほっとしました。

ぜひ、また会いたいものです。

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児童文学作家 末吉暁子の世界へようこそ!
公式HP「末吉暁子童話マップ」(01~16年)を元に、ちょびっとずつ公開。暁子さんの日記などは大体そのまま掲載しております。
猫とファンタジーを愛した作家の部屋へ、どうぞお立ち寄りくださいね~☆byりさ

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