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『犬心』、『おいでフレック、ぼくのところに』

『犬心』
伊藤比呂美 文藝春秋

『おいでフレック、ぼくのところに』
エヴァ・イボットソン 偕成社

MOE 2013年11月号掲載
書評・末吉暁子


私はどちらかといえば猫派だが、たまたま立て続けに目に付いたのが犬の本で、読み始めたらたちまち引きずり込まれた。

飼い犬との交流を綴った名作は、これまでにもさんざん書かれているが、伊藤比呂美さんの『犬心』にも、じわっと泣かされる。

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本書はきっと、犬派で、かなり犬のことを知っている(と思っている)人が読んでも、目からうろこが落ちるような思い、そう、文字通り「犬心」を知らしめてくれるのではないだろうか。


作者はアメリカ人と結婚してカリフォルニアに住んでいるが、熊本の実家では、老いた父親が一人暮らしをしているので、介護のため、2つの国を行ったりきたりしている。

アメリカで飼っている2匹の犬のうち、タケは訓練を受けた屈強で賢いジャーマン・シェパードの雌犬だった。

でも、哀しいことに、犬は人間の何倍もの速さで老いていく。13歳になったタケは、人間で言えば、すでに90歳の老人だ。

作者は、すっかり"死体っぽくなった"タケの寝姿に、老父の寝姿を重ね合わせる。

うーん、この表現にはうなった。思い当たること、私にも、ある。


アメリカ人と日本人の飼い犬に対する考え方の違いも浮き彫りにされていて興味深いし、犬のうんちに関する薀蓄も満載でおかしみを超えて哀切極まりない。

作者は文字通り東奔西走しながら仕事をこなし、現実生活に降りかかるさまざまなトラブルをふり払いふり払い、老犬と老父と、二つの生と死に立ち会い直視して描写する。

そこに感傷が存在する余地がないだけ、なおさら胸に迫って、否応なく、「死とは?」「生とは?」と考えさせてくれる。


一方、『おいでフレック・・・』は、児童文学の王道を行く冒険活劇物語だ。

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大金持ちの息子ハルは、長い間夢見ていた犬との生活が現実のものとなって、喜んだのも束の間、両親から手ひどい裏切り行為を受け、心を閉ざしてしまう。

しかし、思いがけない場所で、その子犬と再会したとき、少年は、これまでの何不自由ない(と思われていた)暮らしをすべて捨て去る大きな決断をする。


物語はここから大きく動き出し、読者を目くるめく冒険の世界へ誘ってくれる。

ここには、イボットソンの得意とする幽霊や妖怪は登場しない。

かわりにたくさんの犬が登場する。

でも、やっぱりこれはファンタジーだと思う。

3年前、85歳で死去した英国のファンタジー作家、イボットソンの遺作だ。

最晩年の作であっても、この起伏に富んだ手に汗にぎる冒険物語! まさに脱帽して合掌・・・・・・。

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児童文学作家 末吉暁子の世界へようこそ!
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猫とファンタジーを愛した作家の部屋へ、どうぞお立ち寄りくださいね~☆byりさ

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