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『発電所のねむるまち』、『嵐にいななく』

『発電所のねむるまち』
マイケル・モーパーゴ あかね書房

『嵐にいななく』
L・S・マシューズ 小学館

MOE2013年8月号掲載
書評・末吉暁子


しばらく前に送っていただいていた『発電所のねむるまち』

タイトルのせいかな。なんとなくノンフィクションだと思っていたが、頁を開いて見れば、美しいカラーの挿絵がふんだんに入った絵物語、しかも、読後にじわじわと効いてくる強烈なメッセージ性もこめられた極上の文学作品だった。

2013MOE-8-A.jpg

物語は、マイケルが、50年ぶりに英国の海辺の故郷に足を向けるところから始まる。

50年も帰らなかったのは、取り返しのつかない苦い思い出があったからなのだ。

町に近づくごとに、マイケルの胸に少年時代の思い出が鮮やかによみがえる。


いじめっこに、レモンキャンディを分けてやらなかったばっかりに、袋叩きにされてしまったマイケル少年。

助けてくれたのは、たまたま通りかかったタイ人の女性、ぺティグルーさんだった。

彼女に介抱されたことがきっかけで、マイケルは、変わり者と思われていたペティグルーさんの数々の謎に触れることとなる。

作者の少年時代の思い出がこめられた美しい湿地で、ペティグルーさんとともに過ごした幸福な日々。

そんな幸せな日々をすべて失うことになったのは、この町に原子力発電所が建設されたからだった。

ぺティグルーさんは追い立てられ、町の人たちもバラバラになる。

しかし、故郷に帰ってきたマイケルが目にしたものは、すでに老朽化のため廃炉になった発電所の建物だった。


福島の原発事故の記憶も新しい私たちに、この作品は重い課題を突きつけている。

モーパーゴは、先ごろ映画になった『戦火の馬』の作者でもある。


一方、『嵐にいななく』は、やはり英国のどこかの村の少しだけ未来の物語。

自然がますます猛威をふるい、地球上の資源も乏しくなって、人々は、ペットを飼うことも許されず、エネルギーの使用も制限されている。

妙にリアリティーがあるのは、すでに私たちがその兆しをかすかに感じ取っているからだろうか。

2013MOE-8-B.jpg

洪水に襲われて別の町に引っ越したジャック少年と家族は、隣家の姉弟と親しくなる。

車椅子に乗っている弟のマイケルは、ジャックのいちばんの理解者となる。

殺処分される運命だった馬を引き取って、なんとか運送に使えるようにしようと悪戦苦闘するジャック。

しかし、馬は人間の思惑通りには動かない。

少年と馬の交流は、単なる動物文学の域を超えて生々しく胸に迫る。

登場人物すべてが内面から描かれているため、マイケルの年齢が初めて明かされるラストは衝撃的だ。

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児童文学作家 末吉暁子の世界へようこそ!
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