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物語の舞台を訪ねて得るもの

児童文学を育んだ女性作家たち 
Series 5 末吉暁子
MOE 2007年7月号より抜粋


取材・文/南谷佳世 撮影/木野聖二


~物語の舞台を訪ねて得るもの~



『地と潮の王』に続いて、「鬼が島通信」の連載に選んだモチーフは〈座敷童子〉


「東北地方に特有の、妖精というか神様というか、すごく面白い存在だなあと興味を持って。

でも私は、東北に親戚も知り合いもいないし、よそ者が面白いとこだけつまみ出すみたいな書き方では、ちゃんとした物語になるわけがないから、書けるかなあ、と」。


迷いながら資料を集めるうちに、似たような存在が世界各地に見られることを知りました。


「ヨーロッパの、かまどに住む家つき妖精とか、『ハリー・ポッター』のドビーなんかも概念は同じなんですよ。

それなら、私なりの座敷童子を書いてもいいんじゃないかと思ったんですね」。


何度か東北を訪ねて、今も座敷童子が出るという旅館にも泊り、イメージをふくらませて書いたのが「屋根の上の茶茶丸」(のちに『雨ふり花さいた』と改題、偕成社)。


末吉さんが実際に体験した不思議なできごとも織りこまれています。


「その土地に行ってみて、それまでわからなかったことがわかる。

それがすごく楽しいですね。

地元の人が自費出版した研究書とか、面白い資料が手に入ったりするし。

それに、ある程度ヴィジュアル的なイメージがないと、細かいところまで書けないんですよ。

想像だけで書こうとすると、まったくステレオタイプなものになっちゃうから。

架空の舞台であっても、こういうところと決めたら、現地を見てきます」。


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『雨ふり花さいた』。手前左はオランダ語版で、右はこれから刊行される韓国語版の表紙絵。


取材のつもりがなくても、旅は創作のきっかけを与えてくれます。

神の島といわれることに関心を抱いて訪れた、沖縄県の久高島。

島の小中学校で、不登校やひきこもりなどの問題を抱える子どもを全国から受け入れていることを知り、生徒たちの話を聞いたりするうちに、新しい物語が生まれました。


「子どもたちひとりひとりに、いろんなドラマがあるんですよね。

簡単に答えてはくれないんですけど、何度か通って話を聞いていると、本当に胸をうつことがいっぱいあって」。


久高島を舞台にした「南の海のミウ」は、現在「鬼が島通信」で連載中

年2回の刊行の間に、何度か島を訪ねて、次回の材料を集めます。


「いろいろ取りこんで、しこみはできたけど、どうやって書いていくかは白紙(笑)。

毎回不安ですよ、本当に。

だけど、それが許されるのが同人誌なんです。

同人誌の事務局ってけっこう労力が要るんだけど、私としては、書く場があるのは本当にありがたいことなんですよね」。


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「鬼が島通信」連載中の「南の海のミウ」と関連資料など。絵はがきの絵は久高小中学校の生徒たちの描いたもの。


「鬼が島通信」は、情報収集の場にもなっています。

羽衣伝説を下敷きにした「水のしろたえ」の連載時には、末吉さんの呼びかけに応えて、全国の読者から各地の羽衣伝説についての情報や資料が寄せられました。

この作品も、単行本にするべく何度目かの直しを終えたところ。


「あっというまに連載から5、6年(笑)。

でも、単行本は、そういうペースでもいいと思うの。

急いで出すよりは、ほんの少しでも完成度の高いものに近づけたい。

自分の体力とバランスをとりながら、病気にならない程度にやっていこうと思っています」。

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「鬼が島通信」に連載した「水のしろたえ」執筆時の資料。毎回、大量の資料を調べて物語をつくっていく。

ファンタジーの素材の宝庫

MOE 2007年7月号
児童文学を育んだ女性作家たち 
Series 5 末吉暁子 より抜粋


取材・文/南谷佳世 撮影/木野聖二

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~ファンタジーの素材の宝庫~


『かいじゅうになった女の子』のような、明るい笑いにあふれた幼年童話。

そして『星に帰った少女』などの、骨太なテーマを内包した長編。

このふたつは、末吉さんの30年来の創作活動における両輪となっています。

長編の多くは、1983年に親しい編集者や作家たちと始めた同人誌「鬼が島通信」に発表されたのちに、単行本となって、高く評価されています。


「長編で、わりにシリアスなものを書いていると、小さい子向けのおかしいお話を書きたくなっちゃうんですよね。

そういう意味で、なんとなくバランスとりながら書いてきたところもあるんじゃないかなと思います」。


子どもたちからもらった感覚で、おばけや魔女の愉快な物語を書くうちに、末吉さんの中の“子ども”が目をさましました。


怪獣とかおばけとか、子どもの好きなものが私も好きなんですよね。

もともとそういう面はあったと思うんですけど、書いているうちに、それがもっと強くなってきて。

やっぱり自分が好きでないと、書けないと思うんです。

ただ子どもが好きそうだから、というのでは、読者に媚びることになってしまうから」。


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おじいさんがだいじな指輪をなくさいたと聞いて驚く三つ子のおばけだち。〈ぞくぞく村〉の住人は皆こんなふうに、こわくなくて愛らしい。『ぞくぞく村のちびっこおばけグー・スー・ピー』(あかね書房)より。垂石眞子絵


書き手も読み手も大好きなキャラクターが大集合したのが、〈ぞくぞく村〉シリーズ

登場するのはミイラや吸血鬼など生身の人間ならぬ者ばかりですが、多少くせはあるものの、憎めない仲間たちです。


「絵を描いてくれた垂石眞子さんが、私の想像以上に面白いキャラクターにしてくれて。

その絵に触発されて、またどんどんイメージがふくらんでいきましたね」。


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〈ぞくぞく村〉のペープサート(紙人形芝居)。講演やお話会で上演すると、子どもたちが大喜び。


書き始めた頃は、どちらかといえば西洋のファンタジーに影響を受けていた末吉さんでしたが、創作を続けながらいろいろと読んだり、調べたりする中で、日本の神話や歴史に興味を抱きます。


「日本にも素材がいっぱいあるんじゃないかと気づいて、山田宗睦先生『日本書紀』や『古事記』の講座に通い始めたら、もうファンタジーの素材の宝庫という感じで。

面白くて面白くて、何年か通いました」。


そこから着想を得て書き始めたのが、「はるかな岸べに」(のちに『地と潮の王』と改題、講談社)。


「自分に書けるかどうかわからなかったんですけど、やってみようと思って。

「鬼が島通信」で連載を始めたんです」。


1985年から6年にわたる12回の連載を、さらに4年かけて書き直したこの単行本は、ファンタジー作家としての新境地を拓く作品となりました。

「末吉暁子のがんこちゃん」

2013年2月24日
読売新聞日曜版

「末吉暁子のがんこちゃん」

鳥居晴美


学校でうんちができない子どもは少なくないらしい。

児童文学作家として長年、脚本を手がける小学1、2年生向け道徳番組の人形劇「ざわざわ森のがんこちゃん」(NHKEテレ、金曜午前9時)に、「うんちしたの、だーれ?」というお話がある。

「がんこちゃん」は、明るく元気な恐竜の女の子。

カタツムリの友だちツムちゃんはある日、恥ずかしくてトイレに行けず、こっそり草むらで用を足す。

ところが、ボール遊びをしている仲間にうんちが見つかり、泣いてしまう。

先生は「ちっとも恥ずかしいことじゃない。ちゃんとトイレでしましょうね」と話す。

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(藤原健撮影)

「小学一年の時、クラスで椅子の下にうんちをした男の子がいました。

『健康や安全に気を付ける』というテーマの時、子どもの頃の体験を基に書いたら、番組を見た先生方から『子どもたちが安心してトイレに行けるようになった』『行った子を冷やかさなくなった』と反響が大きかったですね」


青山学院女子短大を卒業後、講談社に入社。

長女を出産し、「編集の仕事と子育ての両立は無理かも」と悩んでいた時、担当していた佐藤さとるさんに「書いてみたら」と勧められる。

アドバイスをもらいながら創作の世界に入り、退社後の1975年にデビュー。

女の子が少女時代の母と交流するファンタジー作品『星に帰った少女』は、日本児童文芸家協会と日本児童文学者協会の新人賞を受賞した。


生きる楽しさに面白み


個性豊かなお化けが登場する「ぞくぞく村のおばけ」シリーズを執筆中の頃、「番組を見た子どもたちが元気に学校へ行けるように、子どもの立場で書いていただける方」(初代ディレクターの梶原祐理子さん)と、声がかかった。

「大人が子どもにやってほしくないことばかり書いている」とためらうが、「道徳教育の狙いと、『生きることは楽しい』と子どもたちに伝えたくて書いている私の立場は矛盾するものではない」と気づき、仕事を引き受けた。


「友達と仲よくし、助け合う」「約束やきまりを守る」など、学習指導要領の内容を踏まえながら書く物語は伸びやかでお説教臭さはない

「優等生ではなく、泣いたり怒ったり、わがままも言ったりする」主人公も人気で、番組は96年4月の放送開始から今春で丸17年を迎える。

160本を超える脚本の一部は、番組のキャラクターデザインを担当する絵本作家・武田美穂さんとのコンビで、本にもなった。

「番組を見たら、本も読んでほしい。子どもたちが『読書も面白い』と気づいて、ほかの作品も手にとってくれたらうれしいですね」


~~~~~~

好評だった番組を本にした「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ(講談社)は全8巻。

年齢層を下げて小学一年を主な対象とした「新・ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ(同)にも着手し、昨年11月に1巻目『がんこちゃんはアイドル』が出版された。

佐藤さとるさんらと1983年に創刊した児童文学雑誌「鬼が島通信」が、創刊30周年の節目を迎えた。

「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ 末吉暁子さん 

親子の読書 おはなしめぐり
「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ 末吉暁子さん 

2011年3月23日 毎日新聞朝刊


恐竜の女の子を主人公にした人形劇「ざわざわ森のがんこちゃん」は、96年からNHK教育テレビで放送が始まった。

脚本を担当する末吉暁子さん(68)が書いたシリーズ本8冊は、講談社から出版されている。

末吉さんは子どもたちに「がんこちゃんのように、もっと自由に感情を出してもいい」と伝えたいという。

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脚本の依頼があり、小学一年生の道徳番組と知った時は断ろうと思いました。

私の書く幼年童話は、はちゃめちゃでアンチ道徳的。

子どもの心をのびのび羽ばたかせるようなものばかりでしたから、無理じゃないかと。

でも、道徳の本質はコミュニケーションで、子どもがほっとしたり笑えたりするものでいいんだと気づきました。

思いっきり面白くて子どもたちが夢中になれるものを作ろうと、元気な恐竜の女の子と家族、友だちの物語を書きました。


がんこちゃんは大きくて力持ち。

不器用ですが、素直で明るい子です。

泣いたり笑ったり、感情をストレートに表現しますが、やさしいところもあります。

力持ちのお母さんと家事が得意なお父さんなど、意識的に男女の役割を逆転させました

子どもたちは喜んで見てくれますが、やはりテレビは消えてしまう。

いつでも手元に置いて、がんこちゃんを楽しめるように、本にすることになりました。


テレビは動きがあるし、音楽や効果音もあるので退屈しません。

文章は物語の魅力で引っ張っていかなければならないので、よりハラハラどきどきさせたり、意外性を持たせたりします。

なくなった首を見つけた骸骨が旅立つシーンなども、本では描いています。


集中して物語を追ったり想像したりすることは、本でないとできません。

本のがんこちゃんも楽しんでもらえたらうれしいです。

脚本は150作以上あり、トイレの話や環境問題など、本にして読んでもらいたいテーマがたくさんあります。


もっと感情を出していいよ


がんこちゃんは寝坊して遅刻したり、怒って大声で泣いたりします。

うちの娘もそのまま同じ事をしていました。

天真らんまんな姿が、子どもたちの共感を呼んでいるのでしょう。


今の子どもたちは早く大人にさせられているような気がします。

周囲に気遣いをして、感情を自由に出せていないように思えるのです。

子どもは、もっと泣いたり笑ったり、怒ったりしていいんです。

大人は、そんな子どもたちを愛情を持って見つめてほしい。

子どもは、自分が十分愛されていると実感することで、他の人への思いやりの気持ちを育てていくのだと思います。

『ざわざわ森のがんこちゃん』 世界をかける!

『ざわざわ森のがんこちゃん』 世界をかける!

2000年8月28日 毎日小学生新聞 

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『ざわざわ森のがんこちゃん』の作者、末吉暁子さんが、日本ペルー親善協会の人たちとペルーを訪れ、ペルーの子どもたちに「がんこちゃん」の本な どをプレゼントしました。


「がんこちゃん」は、今年の4月から衛星放送を通じて世界中で放送されて います。

NHKの衛星放送のチャンネルは海外では1つしかないので放映す る番組も限られています。

教育テレビの番組が入るのはとてもめずらし い、といいます。

もちろん、ペルーでも「がんこちゃん」は子どもたちに大人気。

末吉さんがおとずれた日系人の子どもの多い小学校でも、大勢が「がんこちゃん」のことを 知っていました。


また、NHKが特別につくったスペイン語版の「がんこちゃん」のビデオも持っていき、現地のラ・ウニイヨン小学校でビデオ上映会をしました。


日本語の「がんこちゃん」は英語やスペインごでは、「ロッキー」。

上映会 後、日本語版の本をプレゼントされたみんなは絵を見て、「ロッキー!」とさけんでいました。


現地の新聞「ペルー新報」は末吉さんが子どもたちと絵本を見ている写真を一面に大きく掲載しました。


末吉さんは、「海外の子たちも『がんこちゃん』を見てくれていると知って 、うれしさいっぱいです。『がんこちゃん』が元気いっぱいに世界中をかけまわっているようで、とってもはげみになりました。」と話していました。

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プロフィール

catonbooks

Author:catonbooks
児童文学作家 末吉暁子の世界へようこそ!
公式HP「末吉暁子童話マップ」(01~16年)を元に、ちょびっとずつ公開。暁子さんの日記などは大体そのまま掲載しております。
猫とファンタジーを愛した作家の部屋へ、どうぞお立ち寄りくださいね~☆byりさ

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